お客さんとして指定された店を利用し、依頼に沿って接客などをチェックする覆面調査(ミステリーショッパー)は、空き時間にできるアルバイトや副業として良く取り上げられています。しかし、実際にやってみると割に合うほど稼げないので辞めておいた方がよいとわかりました。
限られた時間でできる仕事を探している主婦(主夫)や学生の方には特におすすめできません。
ポジティブな意見からは見えない覆面調査バイトのリアルとデメリットを実体験から詳しく解説していきます。
避けるべき覆面調査バイトの条件とは【歩合制はダメ】
「覆面調査=ダメ」とやみくもに断定するのは中立的でないためもう少し詳しく言語化すると、「歩合制(出来高制)の案件や募集企業」が避けるべき覆面調査のバイトや副業の条件となります。
これが避けるべき条件である理由は、覆面調査は単価のわりに調査や報告書作成に時間がかかり、時給換算で最低賃金以上稼ぐことが不可能となっているからです。そして、覆面調査のバイトや副業の大半が歩合制での募集ですので、実質的に「覆面調査=稼げない」と言えます。
逆に言えば、時給制で交通費も全額支給してくれる覆面調査のバイトであれば問題ないということです(ただし、そのような求人は見たことがありません)。
覆面調査バイトの5つのデメリット
覆面調査のデメリットは「出来高制であるため時間がかかるほど稼げないが、総じてかかる時間のわりに報酬が安く経費も出ないので割に合わない」に集約されるのですが、理由をもう少し詳しく解説します。
チェック項目が多く調査と報告書作成が大変
覆面調査の辛いポイント
- チェック項目が多い(10個以上は当たり前)
- 調査だけでなく報告書の作成と提出が必要(文章量が多い)
- 店内でメモを取るのが禁止で接客内容など細かく記憶する必要がある
- 調査だけで30分以上かかり、さらに報告書作成の時間も必要
「覆面調査=稼げない」という意見の最大の根拠がこれです。
案件によって数は異なるものの、覆面調査のチェック項目や対象者は数多くあり、店舗での調査には少なくとも30分以上はかかります。
チェック項目の1つ1つも、店員(従業員)がマニュアルに沿った接客ができているかどうか、人員の配置はどうなっているかなど、詳細な報告が必要ですが、店内でメモを取ることは禁止です。
したがって、店内を見たり接客を受けたりしながらその内容をその場で記憶しつつ、チェック項目や報告が必要な言動と照らし合わせながら報告すべき事柄を脳内でまとめる事が求められるため、店舗調査は簡単ではなく、多大な労力を必要とします。
覆面調査には時間を除く必要経費から報酬額を差し引くと利益が残る「稼ぐこと」を目的とした案件と、飲食店で使った飲食費の一部が支給されるような「節約」を目的とした案件の2種類がありますが、片手間でできる仕事ではないため、節約を目的とした案件の募集文にあるような「楽しく食事をしながら得をする」ということはまず不可能です。
加えて、報告書作成も大変です。「よかったです」「問題ありませんでした」といった抽象的な報告は禁止であり、細かく定められたチェック項目に沿って問題がある場所とない場所を調査時の具体例を挙げながら丁寧に文章で解説する必要があります。
そして、このような報告箇所がいくつも存在するため、報告書の作成にも同じく30分以上の時間がかかることは普通です。
詳細は後述しますが、報告書は再提出になる可能性もあります。
一方で報酬単価は1,000円~2,000円程度の案件が多く、作業量は金額が増えるごとに増える傾向にあります。
これは調査と報告書作成、そしてマニュアルの読み込みといった事前準備まで含めた報酬額であり、調査時の商品購入費用(※スーパーなどでは必要)や交通費も含まれているため、時給は1,000円どころか800円を下回ることもザラです。
ちなみに、2022年9月現在の最低賃金は一番低い沖縄県で820円です。
このように、手間のわりに報酬額が低いことが最大のデメリットとなっています。ここまでの内容だけでも辞めておいた方がよいことがお判りいただけたのではないでしょうか。
内容に不備があるとやり直しが必要となる
先に覆面調査の報告書作成が大変であると紹介しましたが、この報告書は提出後、不備があると判断されると修正および再提出が必要になることもあります。案件によって再提出となる条件がわかりづらく、報告するまでこの内容で問題ないのか判断がつかないことがある点もデメリットです。
筆者の実体験ですが、関東某所のスーパーマーケットを調査した際に再提出を命じられ、1名に付き200文字程度の説明の作成が必要な従業員の調査を5名分ほどやり直したことがあります。これだけで追加で3時間以上かかりました。
調査場所までの交通費が基本的に自腹
先に「覆面調査の報酬単価は1,000円~2,000円程度の案件が多く、金額が増えるごとに作業量が増える傾向にある」とお伝えしましたが、これは交通費が含まれた金額です。
交通費が別途支給される案件がある確率はゼロではないため「ない」と言い切ることはできませんが、貰えるのはよほどのレアケースとお考えください。
電車やバスで調査先に向かえば当然交通費がかかりますし、車やバイクで行く場合もガソリン代がかかりますので、交通費を負担すれば手取りはさらに下がります。
自宅周辺の店舗や通学定期・通勤定期の範囲内の案件を受ければ交通費は浮かせることができるものの、このような範囲内に調査先がある案件は少ないことが普通であるのが難点です。
先に紹介した報酬単価と1件当たりの所要時間から覆面調査の割の合わなさはご理解いただけたと思いますが、交通費が支給されないことも稼げなささに拍車をかけています。
受注するまで案件ごとの作業量がわからない
覆面調査の案件の調査量はケースバイケースですが、受注するまでにわかる情報は必要経費と店舗での調査のみの所要時間のみで、チェック項目などが非公開であるため、実際に必要な全体の所要時間が読めません。
慣れの有無に関わらず応募段階で作業量を予測して負担の大きい案件を避けるということが不可能で、経験を積むほど効率的に稼げるようにならないこともデメリットといえます。
登録と研修(事前テストなど)に時間がかかる
覆面調査のバイトや副業の仕事を探す際は覆面調査の案件を募集している求人サービスに登録することになります。この求人サービスの登録には、登録作業と実際の調査全体に共通する作業や守秘義務等のルールについての研修やテストがあります。
そして、これらの所要時間は合計で1時間以上かかります。
このように、仕事を始めるどころか案件に応募するまでに既に多くの時間を必要とすることがデメリットです。
クラウドソーシングなども登録時にプロフィール作成等の手間がかかりますが、覆面調査の場合は稼げる見込みの金額が少ない割に手間が多いのでデメリットの部分が強くなっています。
【実体験】スーパーの覆面調査の時給は109円でした
筆者が覆面調査を実際に行った時の体験談をご紹介します。話のオチは「報酬と所要時間をあとで時給換算したら時給109円くらいだった」だけですが、具体的な所要時間がイメージしていただけると思いますので参考までにどうぞ。
調査先 | 都内のスーパーマーケット |
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報酬額 | 1,500円(諸経費&税込) |
必要経費 | 300円(商品購入代)+ガソリン代 |
所要時間 |
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案件1件をこなした時点で割に合わないことがわかって辞めたため、実体験は1件だけですが、「エ」から始まる某社で受注した案件の話になります。案件数が多い首都圏でこれです。
所要時間は合計で11時間程度かかっており、最初に紹介した時給109円というのは、レジの接客チェックのために最低限必要だった商品購入代(事前に通知のあった必須の経費)は含めているものの、移動に使用したバイクのガソリン代は考慮に入れていません。
調査は別件で出かけた帰り道に行ったので、その移動時間の2時間を抜いたとしても時給は133円ですw。
上記の表にもある通り、本件では報告書の修正を命じられて再調査も実施したのですが、この修正理由もマニュアルに具体的な指示が乏しい理由であることに加え、調査時の事実としてこれ以上書くことが無い状況だったので非常に困りました。
【まとめ】覆面調査で楽に稼ぐことはできない
在宅バイトでも副業でも、時間に融通が利く仕事は、募集文に良さげな言葉が並んでいて自分でも手軽に稼ぐことができそうだと錯覚しがちですが、実態との乖離が激しいケースは多々あります。
覆面調査(ミステリーショッパー)もその類であり、通常のアルバイトのように稼げる仕事ではありませんのでやめておきましょう。